学びと仕事の東大附属卒業生調査

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学びと仕事の東大附属卒業生調査

調査にご協力いただいた皆様へ

拝啓 皆様におかれましてはますますご清祥のこととお喜び申し上げます。

さて、この度はわたくしども東京大学大学院教育学研究科附属 学校教育高度化・効果検証センターの研究プロジェクトである「附属学校データベースプロジェクト」による「学びと仕事の東大附属卒業生調査」に、ご多忙中にもかかわらずご協力いただき、まことにありがとうございました。 紙の調査票による調査およびWebによる調査によって、多くの方々から貴重なご回答をいただくことができました。

本調査は、2015年度から6年間継続する附属学校の第3期中期計画の一環として実施されました。調査の結果は、貴重な研究成果として東大附属の教育をより一層充実させるために役立てさせていただくとともに、広く教育のあり方を研究するために有効に活用させていただきます。また、研究成果はこのWebサイトを通じて随時公開させていただく予定です。

略儀ながら、この場を借りて、深くお礼申し上げます。

敬具

2018年11月

 

個人情報に関するお問い合わせについて

今回の調査について、「東大附属の卒業生が個人情報を漏えいさせているのではないか?」という旨のお問い合わせが数件寄せられています。しかし、このような事実は全くございません。具体的な調査体制およびデータの取り扱いは以下の通りです。

  • 調査体制

今回の調査は東京大学大学院教育学研究科附属 学校教育高度化・効果検証センターと東京大学教育学部附属中等教育学校の連携のもと行われている調査です。そのため、東大附属の卒業生は一切かかわっておりません。また、本調査に係る支出は東京大学の「国際卓越大学院プロジェクト」ならびに効果検証センター予算から行われており、他の学内外の団体・個人との金銭的・人的関連は全くありません。

 

  • 調査IDと個人情報の対応

今回の調査では、3つの情報がポイントになります。

  1. 調査ID(大学が調査のために設定したランダムの6ケタの数字)
  2. 同窓会会員番号
  3. 個人情報(住所・氏名など)

調査を実施するにあたり、調査票をみなさまのご自宅に送付させていただいております。この手続きは、同窓会のご紹介により、同窓会報送付時と同じ業者に依頼しております。大学が業者から得た情報は、調査IDと同窓会会員番号の対応表のみであり、住所・氏名などの個人情報は大学には渡っておりません。つまり、大学が把握しているのは「どの調査票をどの同窓会会員番号の方に送ったか」のみです。また、会員番号と個人情報の対応に関する情報は、同窓会により保管されていますが、同窓会関係者は研究には従事しておりません。したがって、大学側がみなさまの個人情報を特定することはできませんし、同様に、同窓会関係者が皆様の回答した調査IDを特定することもできません。

 

  • 測定されたデータの扱い

回答済み調査票やWEBでの回答データは匿名化、暗号化されているため、そこから個人情報を特定することはできません。また、これらのデータを取り扱うことができるのは当センターの担当者 (教員) であり、これ以外の教職員、附属学校卒業生、同窓会関係者がデータに触れる機会は全くありません。また、皆様にご回答いただいたデータは、当センターにてファイアウォールなどで多層防御したコンピュータに厳重に保管してあります。

 

以上のことから、本調査に関わって卒業生が個人情報を漏えいさせることはできない仕組みとなっており、現に、これまでにも個人情報が漏えいしたという事実は一切ございません。
皆様にはご心配をおかけいたしまして、大変申し訳ございませんが、本調査の個人情報保護体制につきましてご理解賜りますようよろしくお願い申し上げます。

 

調査の概要

附属中等教育校 (附属中学校・高等学校) の卒業生の方々が在学時に経験された主体的で探究的な学びが、その後のキャリアにどのような影響を与えうるのかを明らかにすることを目的とした、教育学・心理学・社会学・経済学を横断する学際的研究です。学校教育高度化・効果検証センター 効果検証部門と附属中等教育学校の連携のもと行われているこの調査は,のべ5000人以上の附属学校卒業生の方々を対象とし,2017年度末に実施されました。

 

これまでの調査結果

「学びと仕事の東大附属卒業生調査」は、東大附属卒業生を対象として2018年3月に実施されました。調査はWeb上での回答と調査票の送付によって実施されました。計画サンプルサイズは5,163であり,有効回答数は2,310(44.8%)でした。

  • 参加者の属性

80代を除き、いずれの年代も性比は概ね5:5でした。また、各年代で100人以上の卒業生にご回答いただきました(図1)。なお、80代の性比は,「学校教育を受ける」という点に関する時代的な背景が影響した結果であると考えられます。

 

  • 東大附属在学中における総合的な学習での取り組み

総合的な学習は、既存の資料からの情報収集による学習、自分自身の経験を通した学習、他者の経験やその分野に精通した人物の見聞を通した学習、他者との相互作用による双方向的な学習など多岐にわたります。卒業生のうち、総合的な学習を「経験した」と回答した参加者の割合は全体の47.5%(1,097人)でした。また、そのような参加者の半数以上がほとんどの項目で総合的な学習の各取り組みに積極的にかかわったことがうかがえます(図2)。

さらに、多くの卒業生が、総合的な学習はさまざまな能動的活動能力の育成について他の教科よりも効果があると回答しました(図3)。そのため、総合的な学習が狙い通りに能動的な思考や行動形態を引き出している可能性がうかがえます。

 

  • 進学先での取り組み

東大附属の卒業生は、男女いずれも8割以上が進学しました。このうち大学進学をした卒業生の占める割合は,女性で60.8%,男性で87.9%でした。

進学先での各活動への取り組みに関するほとんどの項目に対して、多くの卒業生が熱心に取り組んでいることが示されました(図4)。ただし、「ボランティア活動」「留学・ホームステイなどの国際交流」に対する熱心な取り組みをしてきた回答者は半数に満たないという結果でした。この点について,ボランティアやホームステイ・留学は日常生活における活動としての一般性が大きくないことを反映した可能性が考えられます。

また、進学先での能動的な学習への取り組みについても、多くの卒業生が積極的にかかわっていたことが示唆されました(図5)。同時に、東大附属での総合的な学習が進学先での能動的な学習にも役立っている可能性が示されました。

さらに、進学先での集大成とも捉えられる、卒業研究や卒業論文に関するさまざまな活動にも積極的に取り組んできたことが示されました(図6)。

これらの結果から、東大附属卒業生は進学先のさまざまな取り組みに対して積極的にかかわっていたことが示唆されます。特に、これらは東大附属が教育目標として掲げる「探究性」「市民性」「協働性」の育成を如実に反映しているものと考えられます。

 

  • 就業先の雇用形態と職種

東大附属卒業生の就業経験の割合は,女性では90.2%,男性では91.4%と高く、特に最初の職業での雇用形態が正社員・正職員であった回答者は女性で85.2%,男性で85.5%を占めました。また,最初の職業の職種では,男女とも「専門・技術職」「事務職」「営業・販売職」が8割以上を占めました(図7 A)。

一方で,現在の職業の雇用形態では,正社員・正職員の割合が,女性では38.4%,男性では58.5%でした。各性別での10%以上があてはまった雇用形態は,女性では,家事(専業)(20.2%),臨時雇用・パート・アルバイト(18.9%),男性では,自営業・家業(12.5%)でした。また,現在の職種で各性別で10%以上の参加者があてはまったものでは,女性で専門・技術職,事務職,男性で管理職,専門・技術職,事務職,営業・販売職でした(図7 B)。

 

  • 初めての職業の離職

初めての職業を離職した割合は,女性で78.9%,男性で61.8%でした。定年退職による離職を除き,女性では「結婚・出産のため」が46.9%と高い割合でした。一方男性では、「倒産,整理解雇又は退職希望に応じたため」「会社に将来性がなかったため」「賃金の条件がよくなかったため」「希望する条件により合った仕事が他に見つかったため」がそれぞれ10%以上の回答者にあてはまった理由でした。また,男女いずれも10%以上の回答者にあてはまった理由は、「キャリアアップするため」「自分がやりたい仕事とは異なる内容だったため」でした(図8)。

これらの結果から、卒業生の多くは基本的には初めての職業を継続し、離職する場合にも自己向上などの積極的な意識に基づくことがうかがえます。

 

  • 現在の職業に対する意識

初めての職業を継続しているか、または転職したかにかかわらず、卒業生の多くは現在の職業に対して積極的にかかわり、やりがいを持って臨んでいることが示されました(図9)。

 

  • 現時点でのまとめ

今回の調査では、卒業生を対象に、東大附属在学時、卒業後の進学先、卒業後の就業先でのさまざまな活動や考え方に着目しました。集計した結果、多くの卒業生が、東大附属在学時はもとより、卒業後から現在に至るまで多くの活動に積極的にかかわり、能動的に思考・行動していることが明らかになりました。

 

今後も調査を継続することで、東大附属の教育効果をより詳細に示すことができると考えられます。なお、現時点でのより詳細な調査結果は、当センターより発行されている研究紀要にまとめられていますので、ご覧ください。