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【初等中等教育における探究学習への支援プロジェクト】 小学生の「日本の妖怪」についての探究学習に、人文社会系研究科日本文化研究専攻の院生 長瀬優希さんがアドバイスを行いました

2025.08.06

東京大学大学院教育学研究科附属学校教育高度化・効果検証センター(CASEER)では、「初等中等教育における探究学習への支援プロジェクト」において、児童生徒の発意や関心に基づく探究学習に対して専門の研究者が的確なアドバイスをすることにより、探究の成果をいっそう高度で充実したものとすることをねらいに、東京大学の教員もしくは大学院生がオンラインを通じて支援・指導を行っています。

今回は、広島県の小学4年生Mさんの「日本の妖怪」についての探究学習を通して出てきた疑問に、人文社会系研究科日本文化研究専攻の院生、長瀬優希さんがアドバイスしました。

 

  • 探究のテーマ: 日本と世界の妖怪について
    ・相談者:Mさん(小学4年生)・探究学習の取組単位:個人

 

 

 

  • アドバイスした人:東京大学大学院人文社会系研究科日本文化研究専攻

長瀬優希さん(大学院生)

[専門] 江戸時代の文学、戯作、黄表紙

[研究テーマ] 黄表紙における教訓

 

  • コーディネーター:教育学研究科 本田 由紀教授(CASEERセンター長)

 

 

 

Mさんのご相談

 

「妖怪」とは何か? という難しい問いを、どう深めるか
―言葉の意味を紐解き、比較することで特徴をつかむ―
Series3. 日本と世界の妖怪について

 

 

長瀬さん:

本日は宜しくお願いします。東京大学大学院人文社会系研究科、日本文化研究専攻に所属している長瀬優希と申します。今は修士課程の2年生で、普段は江戸時代の文学について研究をしています。どのぐらいお力になれるかわかりませんけれども、よろしくお願いします。

Mさん:

Mです。小学4年生です。昨年から妖怪について調べていて、低学年代表として全校生徒の前でスライドを発表しました。内容は、日本にいる妖怪について、各県ごとに調べました。また、低学年の皆に協力してもらって、一人ひとりが作ったSDGsの妖怪をまとめて図鑑にしました。今日はよろしくお願いします。

 

 

発表したスライドのタイトルと、Mさんの考えたSDGsの妖怪


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長瀬さん:

事前に、Mさんからいただいたご質問はこちらの4点だと思います。

 

<質問>
① 調べる程に、妖怪なのかお化けなのかの線引きが難しい(唐傘お化けとか)
② 妖怪と、世界で言われるモンスターの違いは何か?
③ 世界の妖怪の何%が日本の妖怪なのか?
④ 世界で妖怪が一番多い国を調べるにはどうしたら良いか?

 

この質問をいただいて私もずっと考えていたんですけど、まず大前提として、この4つとも、とても難しい質問だっていうことをお伝えしたいんですね。とっても難しい質問で、どれも簡単には答えが出ないし、1つの答えが出てくる質問ではない。必ずしもわかりやすい答えが出てくるとは限らない質問で、僕の先生もこれは難しいよねっておっしゃっていた。 そのくらい難しい質問だということを、まずお伝えしておきたいと思います。 その上で、1つずつの質問についてお話ししていきたいと思うんですけど、大丈夫でしょうか?

 

Mさん: はい。

 

長瀬さん:

まず一つめの「妖怪なのかお化けなのかの線引きが難しい」というご質問なんですけども、そうですね。 まず、Mさんは妖怪とお化けの違いって、どういうふうにお考えですか?

 

Mさん:

ええっと…、お化けとか幽霊には、何かしたいこととか、恨みとかがあって成仏できていない動物とか物とかがなって、妖怪は、人間やいろんな動物とかから生まれたものもいれば、妖怪として生まれたものもいる…。

 

長瀬さん :

そうですね、確かにそれは1つあるかなぁと僕も思います。僕は、妖怪とお化けにどういう違いがあるのかってことを考えるときに、まず辞書を引いてみたんですね。辞書で調べるというのは、こういうことを考えるときに、最初の手がかりとして良い調べ方かなと思うのでお薦めです。国語辞典で「妖怪」と「お化け」を引いてみたら、いまMさんがおっしゃったような特徴や違いについて書かれていることもあれば、辞書によっては、お化けと妖怪は同じものだよっていうふうに説明しているものもあったりしました。辞書でもそんな風なので、この2つの違いを説明するというのは、なかなか難しいんだなと思います。質問の時に、線引きが難しい例として「唐傘お化け」をあげてくれていましたが、それがいい例で、お化けと妖怪のどちらかに分類しきれないものもあったりするので。

また、僕は江戸時代の文学を主に研究をしているんですけれども、江戸時代の文学だと、お化けっていう言葉とすごく似ている“化け物”という言葉も結構使われていたりします。この化け物っていう言葉は、辞書では「化けて怪しい形姿をするもの」というふうに説明がしてあって、出てくるものとしても、妖怪とすごく似ていたり、重なっていたりするものがいっぱいある。 江戸時代の人たちは、化け物と妖怪っていうのはほとんど同じような意味だと捉えていたようです。そういうことを考えると、お化けとか化け物っていうのと、妖怪っていうのは、かなり重なるところがあるのかなと思います。その上で、どこに違いがあるのかなぁということを考えたときに、お化けとか化け物っていうのは、名前に“化ける”ってありますよね。 その化けるっていうのは、つまり、姿を変えるっていうことだと思うんです。姿を変えるとか、あるいは姿形が人間とは変わったものだっていうところ。 そこに化け物とか、お化けの特徴っていうのがあるのかなっていうことを考えました。

ただまあやっぱりお化けと妖怪って多分、もともとは違うものだったのかもしれないんだけれども、結構ぐちゃぐちゃになっているというか、実際にはどちらとも言えるようなものがたくさんあったりするので、無理に線引きをしようとしないで、お化けも含めた妖怪について広く調べてみるでもいいのかなと思いました。

 

Mさん:はい、ありがとうございます。

 

長瀬さん :

じゃあ、2つめのご質問にいきますね。妖怪と、世界で言われるモンスターの違いは何かっていうお話だったかと思います。これも、僕はどうしようかなと思ったときに、まず辞書を引いてみました。辞書でモンスターを調べると、「怪物」とか「怪獣」とかって出てきたりします。これって、妖怪と似ているような気もするけれど、なんかちょっと別のものみたいな感じもしますよね。 Mさんは妖怪とモンスターの違いについて、何か考えていることがあったりしますか?  何でもいいんですけど。

 

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支援ミーティングを終えて

 

Mさんより:

私は妖怪についてよく知っている人と話す事があまり無かったので、長瀬さんと話せてとても楽しかったです。お話しを聞いて、妖怪、化け物、モンスター、フェアリーという名前の意味の線引きが難しいなと思いました。妖怪の意味を取り違えないように、教えていただいた事を活かして、世界のモンスターやフェアリーについても探究してみたいと思います。ありがとうございました!

 

長瀬さんより:

普段小学生とお話しすることはないので緊張していましたが、Mさんの好奇心にあふれた興味深い質問のおかげで、たいへん充実した時間を過ごすことができました。真摯に話を聞いてくださったMさんと、貴重な機会を作っていただいた本田先生をはじめとするCASEERの皆さんに、心から感謝しています。

 

 

 

 

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