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第4回「生徒の学びの見取りと支援」を開催しました!

個人研究型探究学習 教員研修プロジェクト
第4回「生徒の学びの見取りと支援」を開催しました!

2026.09.05

2026年8月28日(金)に、個人研究型探究学習の指導者を支援する研修プロジェクト第4回定例研修会をオンラインで開催し、全国から20校・64名の先生方に参加いただきました。

第4回のテーマは、「生徒の学びの見取りと支援。前回の研修会で示された「教員は正解を与える専門家ではなく、伴走者として関わる」という立ち位置から、具体的にどのような関わり方が生徒の探究を支えるのかについて、国内外の研究知見や事例をもとに考えました。

 

【1】「生徒の学びの見取りと支援」に関する研究からの知見

第一部では、本田由紀教授より、「生徒の学びの見取りと支援」に関する国内外の研究知見をもとに、探究学習における教員の関わり方についてレクチャーが行われました。

まず、探究における教員の関わり方として、「放置ではなく対話」「押し付けではなく提案」「否定ではなく受容」という3つの視点が示されました。「主体的に取り組むこと」を重視するからといって、教員が手をかけず、生徒に任せきりにすればよいわけではありません。一方で、教員からの働きかけが一方的な指示や押し付けになれば、生徒自身が考えたり、選んだりする機会を狭めることになります。前提として、教員と生徒のコミュニケーションが容易ではないからこそ、生徒の考えを受け止めながら対話を重ね、必要に応じて複数の可能性を示し、最終的な判断は生徒自身に委ねるという関わり方が求められます。

「見取りと支援」における3つの“No”と“Yes”

 

国内外の研究知見からは、探究の初期段階では、教員によるガイダンスや足場かけが必要であることも紹介されました。そのうえで、生徒の理解や反応を見取りながら支援の程度を調整し、自分でできるようになった部分については徐々に支援を外していくという考え方が示されました。最初からすべてを生徒に任せるのではなく、生徒の状態に応じて必要な支援を行いながら、徐々に自分で探究を進められる状態を目指すということです。

また、「見取りと支援」を独立した指導技術として捉えるのではなく、学校としてどのような探究を目指すのかという目標、生徒一人ひとりの学習過程、その後の振り返りや評価までを含めた一連の流れの中に位置づける必要があることも強調されました。

「見取りと支援」の位置付け

 

探究における教員は、教科内容を直接教える場合とは異なる関わり方が求められます。質問したり、考えられる方向を提案したりすることで、生徒自身の思考や選択を促していくことが求められます。対面でのやり取りだけでなく、生徒が書いたものにコメントを返すことなども含め、継続的に生徒と接する機会を設けることが望ましいとされました。

その際、教員が生徒の言葉や関心を手がかりに、本人もまだ明確に言語化できていない探究の可能性を仮に見立て、それを提案として返すことがあり得ます。ただし、それを正解として示すのではなく、「これは先生の思いつきだから、却下してもよい」と断ったうえで提案したり、複数の選択肢を示したりすることで、生徒自身が判断できる余地を残すことが大切です。

さらに、一人の教員だけで生徒の探究を支えようとするのではなく、他の教員や生徒、外部の指導者など、「複数の目、複数の声」を取り入れることの重要性も示されました。

「見取りと支援」のために望ましいこと

 

【2】東大附属における探究支援の実践紹介

第二部では、東京大学教育学部附属中等教育学校で数学教員として卒業研究の指導経験をもつ稲村先生より、同校における個人研究型探究の実践をもとに、探究支援についてのレクチャーが行われました。

レクチャーでは、稲村先生が卒業研究を指導する際に意識していたこととして、生徒に具体的な提案や情報提供を行うこと、生徒と一緒に研究対象やデータに触れながら考えること、研究の「良いところ」を見つけることが紹介されました。

たとえば、生徒自身では見つけることが難しい論文を紹介したり、取り組みやすい研究方法を提案したりすることで、探究を動かすきっかけをつくります。また、生徒が研究対象としているゲームを稲村先生自身も実際に体験したり、一緒にデータを眺めたりしながら研究内容への理解を深め、その後の提案につなげていたといいます。

研究の「良いところ」を探すという点では、まずは生徒本人にとっての「内的価値」を尊重しながら、そのテーマにどのような学術的・社会的な「外的価値」があり得るのかを教員も探していきます。また、研究が思うように進まなかった場合にも、単に「失敗」と捉えるのではなく、そこから得られた結果や気づきの中に研究としての価値を見つけていくことが紹介されました。

稲村先生が実際の指導場面で「見取りと支援」として意識していること

 

こうした具体的な提案や情報提供が、本田教授のレクチャーで示された「押し付けではなく提案」になっているのかという点についても議論がありました。稲村先生からは、教員が必ずしも生徒のテーマの専門家ではないことが、生徒と一緒に探究する立場を取りやすくする場合があることや、提案した通りに生徒が進めなくてもよいという前提を持って関わることの重要性が語られました。

「押し付けではなく提案」になるためには?

 

【3】生徒本人から見た「見取りと支援」

続いて、稲村先生から卒業研究の指導を受けた東京大学教育学部附属中等教育学校6年生のAさんにも参加いただき、実際に教員から受けた支援をどのように捉えていたのかについて、稲村先生との問答や参加者からの質疑が行われました。

Aさんは、当初VR空間で生じる錯覚に関心をもって研究を始めました。その後、稲村先生から関連する論文や実験方法の提案を受け、実験を試しながら問いや方法を少しずつ変えていきました。想定していた結果が得られなかった際にも、そこで研究を止めるのではなく、教員とのやり取りを手がかりに自分でも調べ、別の実験方法を考えて研究を進めていったといいます。

こうした研究の過程についてAさんからは、教員から提案された内容をそのまま受け入れるのではなく、その後に自分で調べたり、考え直したりしていたことが語られました。教員とのやり取りを終えたあとにも、自宅で内容を整理し直し、「ここはさらに調べられそうだ」と考えながら次の研究につなげていたといいます。教員からの提案を一つの材料としながら、生徒自身が問いや方法を更新していく過程がうかがえる事例でした。

東大附属中等教育学校Aさんの研究の経過

 

また、高校段階で卒業研究に取り組むことならではの難しさについても率直な意見が聞かれました。高校生にとっては大学受験が身近にあり、卒業研究に時間を使えば受験勉強の時間が減り、受験勉強を優先すれば研究を十分に進められないという両立の難しさがあります。卒業研究への取り組み方や熱量には同級生の中でも大きな違いがあることが語られ、研究内容だけでなく、学校生活や進路選択との関係も含めて探究を捉える機会となりました。

 

【4】各校の実践から考える「見取りと支援」

後半では、二つのレクチャーとAさんとの問答を踏まえ、個人研究型探究学習の指導を進めるうえで参加者が抱えている不安や困りごとを出発点に、各校で実践されている「見取りと支援」の工夫について全体で意見交換を行いました。

議論の一つの焦点となったのは、生徒の主体性を尊重しながら、教員がどこまで働きかけるかという点です。生徒に助言すると、その通りに進めてしまい、かえって生徒自身の探究ではなくなってしまうのではないかという不安が共有されました。その一方で、「どうしてそう考えたのか」「どのようなことをやってみたいのか」と問い返しながら、生徒の興味や考えを引き出していく実践も紹介されました。

また、一人の教員が多くの生徒を担当する中で、一人ひとりと対話する時間をどのように確保するかという課題も共有されました。専門外のテーマであっても、分からないことを生徒に尋ねながら対話を楽しむという実践が紹介された一方で、担当する生徒が多く、そうした時間を十分に確保できない学校もあります。そこで、教員だけですべての支援を担うのではなく、生徒同士や他校、学校外の人との関わりを活用する実践についても意見が交わされました。

たとえば、他校と合同でフィードバックの機会を設け、生徒が自分の探究について発表し、他校の生徒や大学院生などから質問や意見を受ける実践が紹介されました。教員は場を設定したうえで基本的には見守り、生徒が複数の人から異なる視点を得られる機会をつくっているといいます。ただし、生徒同士であれば自然に深い対話が生まれるわけではありません。友人関係への配慮などから、表層的なやり取りにとどまり、問いを掘り下げることが難しい場合もあります。そのため、ルーブリックなどの基準を提示して、教員が必要に応じて現在の状態をフィードバックするなど、生徒同士の学び合いを支える工夫についても議論が行われました。

こうした実践共有を通して、一人の教員がすべての生徒を抱え込むのではなく、生徒同士や複数の教員、学校外の人との関係を組み合わせながら生徒の探究を支えるためのさまざまな工夫が共有されました。

また、今回の研修終了後にも延長戦として自由交流の時間が設けられ、Aさんや時間の許す参加者とともに熱心な議論が続きました。

 

本研修では、9月までを「個人研究型探究学習」の探究ステップを検討する基礎プログラムとして実施しています。次回は9月25日(金)に、「探究の評価とそのサイクル」をテーマとして開催する予定です。

文責:CASEER 水林 慎太郎