2026年7月31日(金)に、個人研究型探究学習の指導者を支援する研修プロジェクトの第3回定例研修会をオンラインで開催し、全国から24校・約70名の先生方にご参加いただきました。
第3回のテーマは、「高校段階で取りうる研究の方法論」。
前回の振り返りでは、参加者から寄せられた事後課題をもとに、探究の初期段階におけるテーマ設定や問い立てについて改めて整理するとともに、生徒が探究のプロセスそのものを経験することの重要性が共有されました。
そのうえで今回は、個人研究型探究学習において、生徒が自らの問いに応じて研究方法を選択し、試行錯誤を重ねながら探究を深めていくために教師はどのような視点で支援すればよいのかをテーマに、CASEERより2つのレクチャーを行いました。また、後半では参加者から寄せられた事前課題や質疑をもとに、高校段階の探究における研究方法の選択や教師の関わり方について活発な議論が交わされました。
【1】個人研究型探究における研究方法の学びと選択
第一部では、上野雄己特任准教授より「個人研究型探究における研究方法の学びと選択」をテーマにレクチャーが行われました。レクチャーでは、まず、研究方法とは単なるアンケートやインタビューなどの手法だけを指すのではなく、問いに応じて情報を整理し、研究として扱える形にしていく考え方であることが示されました。問いと方法を往還しながら試行錯誤を重ね、結果や助言をもとに問いや方法を更新していくことこそが、高校段階の探究において育みたい学びであることが共有されました。
また、生徒の「気になる」を研究の問いへと育てるための6つの問いかけと、問いに合う研究方法を考えるための5つの視点が紹介されました。生徒の関心を出発点としながら、妥当性や実現可能性などを踏まえて方法を選択し、試行錯誤を通して問いと方法を更新していく考え方が整理されました。
(クリック・タップで拡大、以下同様)
さらに、教師が研究方法の正解を一方的に与えるのではなく、必要な知識や見通しを示しつつ、生徒の言葉を拾い、問い返しながらともに考える伴走者となることの重要性が示されました。また、個人探究を一人で完結させるのではなく、友人や先輩・後輩、複数の教員との対話や、他の生徒の実践の共有を通して、問いや方法を多面的に見直す場を設けることの重要性も共有されました。
【2】探究のプロセスにおける研究方法と分析方法の選択
第二部では、須藤玲助教より、「探究のプロセスにおける研究方法と分析方法の選択」をテーマに、具体的な研究事例をもとにレクチャーが行われました。
冒頭では、「探究テーマ・問い」から「研究・分析方法」への流れは単線的に決まるものではなく、両者を往還しながら相互に深まっていくことが紹介されました。研究の問いから複数の研究方法を検討するだけでなく、研究方法を検討する過程で問いそのものが具体化・深化していくこともあるため、問いと方法を柔軟に往復しながら探究を進めていくことの重要性が共有されました。
そのうえで、文献調査、インタビュー、アンケート、観察、実験といった多様な研究方法について、それぞれの特徴や分析方法、活用場面を具体的な研究事例とともに紹介されました。研究方法ごとに求められるスキルや留意点は異なり、一つの問いに対しても複数の方法を選択・組み合わせることができることから、生徒の問いに応じて研究方法や分析方法を柔軟に提案できる「引き出し」を持つことの重要性が示されました。また、方法そのものを教えることを目的とするのではなく、生徒が「分かった」と実感できるよう、問いと方法を適切に結び付けるための支援が教師に求められる役割であることが強調されました。
レクチャーを踏まえた全体ディスカッション
レクチャーを踏まえて、後半では参加者と講師陣による全体ディスカッションを行いました。議論では、研究方法や分析方法の考え方を、実際の学校現場でどのように生かしていくかを中心に、多様な実践と課題が共有されました。学校や生徒によって探究活動の到達目標や取り組める内容には大きな幅があり、時間や設備、地域性などの環境的な条件も異なります。さらに、生徒一人ひとりの問いに丁寧に向き合いたいという思いと、教員が担える時間や専門性、人的資源との間に生じるジレンマも指摘されました。
たとえば、生徒が睡眠の質を測りたいと考えても、必要な機材を用意できない場合、その関心を尊重しながら、どのように実現可能な方法へと組み替えていくのかが話題となりました。生徒の考えを安易に否定せず、何を明らかにしたいのかを改めて確かめながら、文献調査やアンケート、インタビューなど別の方法をともに検討することが提案されました。一方で、そのような提案を行うためには、教員側にも研究方法についての一定の知識や「引き出し」が必要であり、教師自身がどのように学び続けるかという課題も共有されました。
そのうえで、教師が答えや方法を一方的に与えるのでも、生徒にすべてを委ねるのでもなく、生徒の問いや考えを尊重しながら、実現可能性や妥当性をともに検討する伴走者として関わることの重要性が改めて確認されました。アンケートやインタビューにおける研究倫理、回答者の確保、文献や一次資料へのアクセスなど、高校で探究を進める際に直面する具体的な課題についても意見が交わされました。
今回の研修終了後にも、延長戦として自由交流の時間を設け、時間の許す参加者とともに議論を続けました。
本研修は、2027年3月まで全11回にわたって月次で開催し、個人研究型探究学習に関する重要なトピックを掘り下げながら、各校での実践につなげていきます。第4回までを「個人研究型探究学習」ならではの探究のプロセスを検討する基礎プログラムとし、それ以降は、学校やカリキュラム全体の中に探究をどのように位置づけ、個人研究型探究学習をいかに充実させていくかを検討する発展プログラムを実施します。
次回は8月28日(金)に、「生徒の学びの見取りと支援」をテーマとして開催する予定です。
文責:CASEER・水林 慎太郎


「問いに合う方法」を考えるための5つの視点















