時事通信社「内外教育」に掲載されました

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時事通信社「内外教育」に掲載されました

本センター関連プロジェクトの研究調査(プロジェクトリーダー 勝野正章本学教授)について、時事通信社の「内外教育」(2018年10月29日号)に掲載いただきましたので、お知らせいたします。

 

掲載いただきました内容は、昨年度行いました予備調査の内容と、今年度行います大規模調査の予定についてです。

昨年度の予備調査では、就学援助率*が、全国平均(15.4%、文部科学省(2016)発表)を下回る学校(13.6%、以下低援助率校)と上回る学校(41%、以下高援助率校)各1校にご協力いただき、教師の労働時間を比較する調査を行いました。

その結果、①就学援助率に関係なく、貧困状況にある子どもと生徒指導等で相対する教師に組織的な支援を行わない場合、教師の労働時間が増えてしまう可能性、②高援助率校であっても、学校が組織的に教師を支援することで、教師の労働時間を軽減できる可能性が明らかになりました。

 

*就学援助率 生活保護法第6条第2項に規定する要保護児童および市町村教育委員会が生活保護法第6条第2項に規定する要保護者に準ずる程度に困窮していると認める児童が、全体の就学児童数に占める割合のこと。

 

なお予備調査全体に関する主な分析結果のポイントは以下の通りです

1)不登校支援教室や教員の追加加配などで、学校や教育委員会が組織的に教師を支援する場合、高援助率校の教師の総仕事時間は低援助率校の教師よりも短くなった。

2)1の結果を踏まえ、学校の公的支援や組織的支援の有効性を検討するために、高援助率校の「小学部」(公的支援なし)、「中学部」(公的支援あり)の教師を対象とした「週総仕事時間」と「社会的経済的背景が低い児童に対する対応時間」の比較を行った。なお、小学部には部活動がないため、いずれの時間にもいわゆる部活動などの時間を含んでいない。

その結果、小学部教師の「週総仕事時間」は週8時間、「社会的経済的背景が低い児童に対する対応時間」は週7時間、それぞれ長くなった。その時間差は統計的に有意だった。

→子どもの貧困が教師の多忙化に影響している可能性が示唆された。

3)今回の予備調査は同一市町村内で行ったため、調査結果に与える地政学的影響は微小と考えられる。そのため、低援助率校も高援助率校のような子どもの貧困に関する影響があると考えられたため、聞き取り調査を行った。その結果、低援助率校の教師から、保護対象までは行かない「貧困ボーダーライン上の子ども」の存在がいることが示された。しかし、あくまで「貧困ボーダー」なので公的支援はなく、孤軍奮闘状態になり、多忙になる教師の存在が見受けられた。

 

なお、本関連プロジェクトは、平成29年度科学研究費助成事業基盤研究(A)「子どもの貧困と学習の社会的成果に関する理論的実証的研究」(課題番号17H01023)の助成を受けて実施しているものです。

 

 

本お知らせに関するお問い合わせ先

学校教育高度化・効果検証センター 効果検証部門 中等教育ユニット

特任研究員 石島照代 c-kouka[at]p.u-tokyo.ac.jp  ([at]を@に代えて送信してください)