2026年9月25日(金)に、個人研究型探究学習の指導者を支援する研修プロジェクト第5回定例研修会をオンラインで開催し、全国から22校・58名の先生方に参加いただきました。
5月から実施してきた基礎プログラムも、今回で最終回を迎えました。第5回のテーマは、「探究の評価とそのサイクル」。探究で何をどのように評価するのか、評価を学習過程の中にどのように位置づけるのかについて、研究知見と各校の実践の両面から考えました。今回は、4校から実践をご紹介いただき、議論を行いました。
【1】研究知見から考える「探究の評価」
第一部では、CASEER特任研究員の澤田和輝より、「探究学習の評価」に関する国内外の研究知見をもとに、探究において何を、どのように評価するのかについてレクチャーが行われました。
探究学習では、成果物、探究のプロセス、身についた資質・能力など、さまざまな対象を評価することが考えられます。また、教員による評価だけでなく、自己評価や生徒同士の相互評価を取り入れたり、ルーブリックやポートフォリオなど、さまざまな方法を用いたりすることもできます。
レクチャーでまず確認されたのは、評価方法を選ぶ前に、探究学習を通して生徒に何を経験してほしいのか、どのような力を身につけてほしいのかという教育目標を明確にすることです。探究の目的によって重視する対象や方法は異なるため、それぞれの特徴や限界を踏まえ、学校の目標に応じて評価方法を選択・組み合わせていくことが重要だと説明されました。
また、「誰が評価するか」「いつ評価するか」「どのような基準で評価するか」「何を評価材料とするか」など、評価を設計する際の複数の観点が示されました。また、複数の教員が評価する場合などには、評価者によって結果が大きく異ならないかという「信頼性」の問題についても取り上げられました。
※信頼性:測定・評価の結果が、繰り返しや評価者間でどの程度一貫しているかを表す概念。
どの評価方法にも長所と限界があります。レクチャーでは、教育目標に照らして必要な方法を選び、必要に応じて組み合わせる考え方が示されました。たとえば、日々の対話やプレゼンテーションを形成的な見取りに用い、最終成果物を総括的に評価する組み合わせも紹介されました。
学校ごとの目標・狙い・理想から継続的な探究を支える評価を設計することの重要性
【2】事前課題から見えてきた「探究」評価の現状
第二部では、CASEER特任研究員の林知里が、事前課題への回答をもとに参加校で実際にどのような評価が行われているのかを整理し、そのうえで各校の実践を検討しました。
「探究」評価の現状を把握するため、参加されている先生方を対象に実施した事前課題では、年度末や学期末に論文、ポスター、プレゼンテーションなどの成果物を評価する実践が多く見られました。また、探究のプロセスや試行錯誤、主体性を評価の対象に含めたり、途中成果物へのコメント、個別面談、中間発表、ポートフォリオなどを用いたりする実践も報告されました。
その中で目立ったのが、評価後の活用に関する課題です。対話やフィードバック、振り返りを取り入れている学校がある一方、「特にない」「うまくできていない」「年度末に評価するため次に活かせない」といった回答も多くありました。年度末に評価が集中すると、生徒が結果を受け取り、その後の行動を考える時間を確保しにくいという制度・カリキュラム上の制約も示されました。
こうした回答を踏まえ、総括的評価は「何ができるようになったか」を捉えて次の段階に活かすもの、形成的評価は「今どこにいるか」を捉えて次の一手を生み出すもの、と整理されました。
形成的評価をめぐっては、「評価」と意識されていない対話や支援も論点となりました。たとえば、生徒と一対一で対話して現在の状況を把握し、問いを返すことは支援であると同時に、「生徒の現在地を見取り、次の学びを生み出すための情報を得る」という意味では形成的評価としても捉えられます。前回の研修で扱った「見取りと支援」と今回の「評価」の境界が、実践の中では必ずしも明確ではないことが確認されました。
また、探究の評価施策を検討したり見直す際の視点として、「何のための評価なのか」を起点とした、評価設計の5つの視点が提示されました。
【3】実践から考える「探究の評価」
続いて、4つの参加校の先生方から、実際に使用しているルーブリックやワークシート、カリキュラムなどの資料をご共有いただきながら、探究の評価に関する実践をご紹介いただきました。
4校に共通していたのは、成果物だけでなく、探究の過程や振り返りも評価に取り込んでいた点です。ただし、何を重視し、どのような方法や体制で評価するかには、各校の教育目標やカリキュラムを反映した違いがありました。
A校では、高校2年生の個人課題研究の終了時に、生徒自身の自己評価と課題指導者による評価を組み合わせた「口頭試問」を実施しています。口頭試問では、研究内容、研究と社会とのつながり、個人課題研究の経験を今後どう生かすかを振り返ります。研究経験から教訓を言語化し、自己理解を深めることが目的とされています。
B校では、学校として育成を目指す資質・能力や望ましい行動を具体的に示し、生徒と教員の間で共有しています。セルフアセスメントでは、各項目を段階的に自己評価するとともに、その判断の理由を自身の活動内容と照らし合わせて記述します。報告では、こうした具体的な指標が生徒に方向を示す一方、時間的制約や通知表との兼ね合い、生徒・教員双方の負担も課題として挙げられました。
C校では、年間を通して「探究―評価―改善」のプロセスが2回循環するようにカリキュラムが設計されています。全教員によるメンター制に加え、大学院生などがTAとして授業に入り、生徒の探究に伴走します。教員とTAは「指導の手引き」や「進捗確認表」を共有し、生徒の状況を把握しながら連携しています。また、外部発表や大学・企業との連携、進路・将来への還元もカリキュラムの中に位置づけられています。
D校では、教科の中で行う探究と総合的な探究の時間を二つの軸とし、情報技術などの学びがそれらを支える形でカリキュラムが構成されています。学校として育てたい資質・能力を細分化して共通言語とし、それを起点に各教科の授業を設計しています。また、共通フォーマットを用いることで、各授業で育成を目指す資質・能力を可視化し、個々の教員の実践を学校全体で共有する仕組みも紹介されました。
4校を比較すると、評価の仕組みは、それぞれの学校が掲げる教育目標やカリキュラム、指導体制と結びついて設計されていました。
【4】評価を支える学校の仕組み
実践紹介後の意見交換では、評価基準の具体性と負担、授業時数、成績・通知表との関係など、評価を実際に運用するための条件が論点となりました。たとえばB校の報告では、詳細な評価基準が生徒に方向を示す一方、時間的制約や通知表との兼ね合い、生徒・教員双方の負担が課題として挙げられました。また、全体の意見交換では、総合的な探究の時間と他教科との授業時数の兼ね合いについても話題となりました。
こうしたやり取りを受け、評価方法そのものに加えて、評価をいつ行い、振り返りや対話の時間をどこに確保するかを、カリキュラムや指導体制と合わせて考える必要があるのではないか、という意見が交わされました。
さらに研修終了後の延長戦でも、多くの先生方に残っていただき、意見交換が続きました。教科の中で探究的な学びをどのように実現するか、探究に対する教員間の認識や熱量の違いを踏まえて学校全体の体制をどうつくるかなど、次の応用編にもつながる論点が話題となりました。
- 基礎プログラムを終えて -
今回で、5月から続いてきた基礎プログラム全5回が終了しました。個人研究型探究学習とは何かというところから始まり、テーマ設定と問い立て、研究方法、生徒の学びの見取りと支援、そして評価とそのサイクルまで、5回を通して探究の各段階を検討してきました。
10月からは応用編へと移り、視点を学校やカリキュラム全体へと広げながら、個人研究型探究学習をどのように位置づけ、充実させていくのかを検討していきます。次回は10月30日(金)に、「学校運営と指導体制」をテーマに開催される予定です。
文責:CASEER・水林慎太郎





